キミは聞こえる
目が覚めたとき、泉は自分の知らない場所にいた。
だが、似た場所は知っている。
閉鎖的で孤独感漂うツンとした雰囲気に息が詰まる。
洗い立てのシーツ、慣れない枕、肌触りがしっくりこない掛け布団からは馴染みのない重量を感じる。
締め切られたカーテンの中に、自分はいる。
保健室だ、と直感的に思った。
まぁ、学校の敷地内で堂々と横になれる場所など保健室のベッドか屋上くらいなものだろうけれど。
上体を起こそうと腕に力を込める。
胸部が悲鳴を上げた。その影で左肘がさりげなく痛みを主張する。
すると、左肘に続くようにそこかしこで「こっちも気にして」「駄目、こっちが先」と声を上げはじめるものだからやっていられない。要は全身が痛いということだ。
諦めて泉は枕に頭を沈めた。
そのとき。
「―――あ、目ぇ覚めた?」
いま、たしかにちょっと魂が抜けた。
なぜ起き抜けにこいつ、とこれ以上ないほどの衝撃とショックを泉は味わった。
カーテンの外から顔をのぞかせたのは設楽だった。