キミは聞こえる
「そ、そういえば、代谷さん」
佳乃の視線は窓の外へ向けられていた。
「なに?」
「授業終わってからもう十分くらい経つけど、あの、桐野君の弟―――」
「ああっ!!」
声を上げ、勢いよく立ち上がり、全身に稲妻が走ったような痛みが突き抜ける。
それでもなんとか窓際に駆け寄り玄関を見下ろすと、今朝と同じ、横断歩道の手前付近に康士はいた。
「ま、まずい……。今日の部活、休んでもいいかな」
「ただのくじ引きだから、大丈夫だと思うよ。どこの部活に決まったか、あとでメールするね」
「ご、ごめん、栗原さん」
鞄を手に、慌てて外へ飛び出す。といっても、動きはきわめてぎこちなく、走っているとはお世辞にも言えない。
それでもなんとか康士の元へ辿り着き、肩で息をしながら、
「ご、ごめん……待った……よね。ごめん……」
「いや大丈夫だけど、それよりどうしたの。すごい苦しそうだけど」
「実は―――」
電柱に手を付き支えとして、呼吸の乱れを整えながら、よぼよぼになるまでの出来事を語る。
と、康士は「それは大変だったね」と同情心たっぷりに言い、するりと泉の手から鞄を抜き取って軽々と自分の肩にかけた。
「え?」
顔を上げると、
「大変でしょ。俺、持つから」
にこっと笑って康士は言った。
佳乃の視線は窓の外へ向けられていた。
「なに?」
「授業終わってからもう十分くらい経つけど、あの、桐野君の弟―――」
「ああっ!!」
声を上げ、勢いよく立ち上がり、全身に稲妻が走ったような痛みが突き抜ける。
それでもなんとか窓際に駆け寄り玄関を見下ろすと、今朝と同じ、横断歩道の手前付近に康士はいた。
「ま、まずい……。今日の部活、休んでもいいかな」
「ただのくじ引きだから、大丈夫だと思うよ。どこの部活に決まったか、あとでメールするね」
「ご、ごめん、栗原さん」
鞄を手に、慌てて外へ飛び出す。といっても、動きはきわめてぎこちなく、走っているとはお世辞にも言えない。
それでもなんとか康士の元へ辿り着き、肩で息をしながら、
「ご、ごめん……待った……よね。ごめん……」
「いや大丈夫だけど、それよりどうしたの。すごい苦しそうだけど」
「実は―――」
電柱に手を付き支えとして、呼吸の乱れを整えながら、よぼよぼになるまでの出来事を語る。
と、康士は「それは大変だったね」と同情心たっぷりに言い、するりと泉の手から鞄を抜き取って軽々と自分の肩にかけた。
「え?」
顔を上げると、
「大変でしょ。俺、持つから」
にこっと笑って康士は言った。