キミは聞こえる
「え」
「あら泉ちゃん、そうなの」
「い、いや、あの、代谷のみなさんと話してみないことには私の一存だけではどうにも……」
鈴森町では広範囲に名を知られている御家代谷を出汁(だし)にしてそれとなく逃げてみようとするが、
「美遥さんは乗り気で浴衣を引っ張り出してるみたいよ。泉ちゃんの気持ち次第ね」
危うくご飯が喉に詰まりそうになった。
そんな、まさか。そんなことって、ありか。
「前向きに考えてみてね」
「……」
笑顔の桐野母に無言で頷き、この話は幕を閉じた。
まもなく泉も食事を終え、めいめい食器をシンクに運び、会食はお開きとなった。