キミは聞こえる
小さく、けれどしっかり胸の奥に波を立てた感情を泉は言葉にできなかった。
こんなわけのわからない気持ちになったのはうまれてはじめてのことだったのだ。
泉は動揺した。
どう表現すれば一番しっくりくるだろう。
擬音で言うならしゅん、いや、きゅんだろうか。
はっきりとはわからないけれど、二つのどちらかなのかもしれないし、両方なのかもしれない。どちらでもない可能性だってある。
泉は首をかしげた。
答えが出せない不快感、というよりはむしろ、もどかしさのほうが強いかもしれない。
……なんなのだろう。
気になる。
けれど、納得のいく表現はうまれない。
そのままひとり悶々と自問を繰り返していると突然、自分のではない着信メロディが響いて顔を上げる。
どうやら千紗の携帯かららしい。
「今から明日の? うんうん、あーわかった。じゃあ宿題終わったらすぐ行くから先に行ってて。うん、じゃねー」
「今の声サトミでしょ。なんだって?」
響子が尋ねる。「明日の話し合いするって」
「どこで」
「男子部屋だって」
「あっちもどっかの部屋に集まってんの?」
「そーみたいだよ。うちらの班の部屋に集合してるって」
「ふーん」