キミは聞こえる
「なんですか」
「今日ね、業者さんからピアノが届くって電話があったわ。お母さんの、修理に出していたピアノ。もう着いていると思うから」
「本当ですか!」
ついらしくもない弾んだ声を上げてしまい、慌てて口を押さえる。
「ええ。帰ったら確認してね」
「はっ、はい! 失礼しました」
てっぺんに乗った異物を手で押さえながら軽く頭を下げて泉は理事長室を後にした。
早足で教室へ戻る。
室内に足を踏み入れたそのとき、かたんと音がして、視界の隅でなにかが動いた。目を向けて、立ち上がった佳乃だとわかった。
「し、代谷さん……」
「まだいたの」
言いながらも足は止めず、つかつかと席へ急いでカバンを掴み上げる。
「じゃあね」
肩越しに挨拶をしてそのまま出て行こうとしたそのとき。
「ちょっ、ちょっと待って」
呼び止められ立ち止まる。と、かすかに頭の毛玉が動いて、手で押さえる。
カバンを持った佳乃が泉の隣に駆け寄ってきた。
のぞき込む瞳はどこか不安げであり、また怯えているようにも見えた。どうしたというのだろう。
「どうかした?」
「あ、のね…代谷さん、その……あ、あれ、その頭」
佳乃の視線がふいに泉の頭上へと向けられる。つられて泉の視線も上がる。「ああ、これ」
「今日ね、業者さんからピアノが届くって電話があったわ。お母さんの、修理に出していたピアノ。もう着いていると思うから」
「本当ですか!」
ついらしくもない弾んだ声を上げてしまい、慌てて口を押さえる。
「ええ。帰ったら確認してね」
「はっ、はい! 失礼しました」
てっぺんに乗った異物を手で押さえながら軽く頭を下げて泉は理事長室を後にした。
早足で教室へ戻る。
室内に足を踏み入れたそのとき、かたんと音がして、視界の隅でなにかが動いた。目を向けて、立ち上がった佳乃だとわかった。
「し、代谷さん……」
「まだいたの」
言いながらも足は止めず、つかつかと席へ急いでカバンを掴み上げる。
「じゃあね」
肩越しに挨拶をしてそのまま出て行こうとしたそのとき。
「ちょっ、ちょっと待って」
呼び止められ立ち止まる。と、かすかに頭の毛玉が動いて、手で押さえる。
カバンを持った佳乃が泉の隣に駆け寄ってきた。
のぞき込む瞳はどこか不安げであり、また怯えているようにも見えた。どうしたというのだろう。
「どうかした?」
「あ、のね…代谷さん、その……あ、あれ、その頭」
佳乃の視線がふいに泉の頭上へと向けられる。つられて泉の視線も上がる。「ああ、これ」