キミは聞こえる

 思わず耳を疑った。

 この夜更けに男子の部屋に行く? あまりに無防備すぎやしないだろうか。

 いくら今までの学生生活に男子がいなかったとはいえ、そのくらいの常識なら泉にだってある。
 ここは同じ女子として、止めるべきところではないだろうか。

 しかし。

 心配する泉の気持ちなどまるで気づくはずもないように、あまりに平然と会話を続ける二人を見て、かえってこちらが突っ込んでいいものかどうかわからなくなり、けっきょくなにも言えぬまま開きかけた口をつぐんだ。

 そのまま耳を傾ける。

「サトミたち全員で来るのかな」
「そーじゃない? なんか飲み物とか持っていったほうがいーかな」
「って言ってもお茶しかないけどね」
「いーんじゃない?」

 そして数分後、ぱたんと千紗がノートを閉じた。

 響子と二人、うーんと伸びをして立ち上がる。
 話していたとおり、冷蔵庫にいれておいたペットボトルを片手にドアへと向かう二人。

 とそのとき、ふいにくるりと千紗が泉を振りかえった。

 目が合い、どうしたの、と首を傾げる。

「泉も一緒にいこーよ」

 思いも寄らない申し出にぎょっとする。
 てっきり、留守番よろしく、とでも言われるものかと思いきや、まさかのお誘いとは。

 それはつまり、一緒に、三人で、男子部屋に行こうということだろうか。
 泉は固まった。

 この人たち、本気(マジ)か……!?

 目を見開き二人を見つめる。否、凝視する。

 驚きと、呆れと、カルチャーショックが同時に泉に襲いかかり、かけるべき言葉は大量に浮かぶものの何ひとつ声にならない。
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