キミは聞こえる
 えっ、と思った。

 すぐさま否定の声が帰ってくるかと思いきや、まさかの沈黙がやってくるとは―――予想外の展開に桐野は困惑する。

 黙り込んだということは、それが意味するのは肯定か。
 それともどう言おうか返答を考えあぐねているだけなのか。

 後者であることを祈りながら、名を呼ぶ―――と。

「代谷……」
「………同類だったら、どうする?」
「……え?」

 なにをどう見て同類と判断すればよいのだろう。

 人類みな兄弟、とかいう話ではないだろう。性別は違うし、性格はまるで真逆だ。

 質問の意図も見えないし、どう答えていいかもわからない。

「なに、言ってるんだ……? 同類って、あいつとおまえは全然ちがう人間だろ」

 代谷はまたすぐには答えず、たっぷり焦らしてから、

「……同類だと感じたときは、もう、私の近くに、いないで」

 途切れ途切れにそう言った。
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