キミは聞こえる
千紗の財布が消えた日の翌朝―――代谷は嘘をついた。
なにかしたんだろ、と尋ねた桐野に違うと否定した。
……代谷は、いったい、なにをしたんだ。
保健室で、設楽となにを話した。傍にいることを許し、二人きりでなんの会話をした。
代谷は、設楽の、なにを知っているというんだ。
たちまち鼓動が速くなる。
呼吸が乱れ、視線が一点に定まらない。
「桐野くん……?」
代谷の声にはっとする。
あれこれと気にしている場合ではない。
あんなふざけたことを言われて黙っているわけにはいかないんだ。
ちゃんと、言わなければいけないことがある。
「……俺は、どんな代谷でも、離れてったりしねえよ」
「桐野くん」
「簡単に友達裏切るような真似する俺じゃねぇ」
「………うん」
「だからもう―――」
「もう言わない。ごめん……傷つけたくないなんて言いながら……」
「ほんとだ」
「うん、ごめん」
どちらからともなく、二人でちょっとだけ笑い合う。
だけど、無邪気に喜べあえる余裕はない。またすぐに沈黙が訪れる。
「………だけど、覚えてだけはいて」
「まだ言うのか」
往生際が悪いな。
「桐野君のためでも、私のためでもあるの。だから、記憶に留めておくだけはしておいて」
「おまえがなんと言おうと俺はな―――……いや、わかった。それだけ言うなら、まぁ覚えておくだけだぞ」
何度言っても聞かなそうだったので仕方なく納得してやったようにそう言うと、
「ありがとう」
……なんで、と桐野は額を押さえた。
……ここでどうして、感謝なんだよ。
俺が寄りつかれなくなることが嬉しいのか。
俺たち二人のためって、どういうことなんだよ。
わけわかんねぇよ……
……くそ…っ。
なにかしたんだろ、と尋ねた桐野に違うと否定した。
……代谷は、いったい、なにをしたんだ。
保健室で、設楽となにを話した。傍にいることを許し、二人きりでなんの会話をした。
代谷は、設楽の、なにを知っているというんだ。
たちまち鼓動が速くなる。
呼吸が乱れ、視線が一点に定まらない。
「桐野くん……?」
代谷の声にはっとする。
あれこれと気にしている場合ではない。
あんなふざけたことを言われて黙っているわけにはいかないんだ。
ちゃんと、言わなければいけないことがある。
「……俺は、どんな代谷でも、離れてったりしねえよ」
「桐野くん」
「簡単に友達裏切るような真似する俺じゃねぇ」
「………うん」
「だからもう―――」
「もう言わない。ごめん……傷つけたくないなんて言いながら……」
「ほんとだ」
「うん、ごめん」
どちらからともなく、二人でちょっとだけ笑い合う。
だけど、無邪気に喜べあえる余裕はない。またすぐに沈黙が訪れる。
「………だけど、覚えてだけはいて」
「まだ言うのか」
往生際が悪いな。
「桐野君のためでも、私のためでもあるの。だから、記憶に留めておくだけはしておいて」
「おまえがなんと言おうと俺はな―――……いや、わかった。それだけ言うなら、まぁ覚えておくだけだぞ」
何度言っても聞かなそうだったので仕方なく納得してやったようにそう言うと、
「ありがとう」
……なんで、と桐野は額を押さえた。
……ここでどうして、感謝なんだよ。
俺が寄りつかれなくなることが嬉しいのか。
俺たち二人のためって、どういうことなんだよ。
わけわかんねぇよ……
……くそ…っ。