キミは聞こえる
泣いても泣いても差し伸べてくれる手はなく、かけてくれる声もなく、やがて泣くことに疲れて自然と涙は引っ込んだ。
夕飯の支度をして、宿題をして、朝を迎えて学校へ行き、誰もいない家の廊下で涙を流し、時間が経てば疲労感で泣き止んだ。
その繰り返しをしているうちに、泉はなにか大切な物を自らの手で捨ててしまっていたらしい。
「おふくろさんが亡くなった後の自分と重なったのか…」
「………って、私なに話してるんだろ。ごめん、こんな暗い話するつもりなかったのに」
立ち上がった瞬間、不覚にも涙が一粒目頭から流れて鼻を濡らした。
慌てて拭い取る。
「代谷」
ざっと砂を蹴る音がした。桐野が立ち上がったのだろう。顔を背けていた泉にはわからない。
「まっ睫毛が入ったみたい」
足元の警棒を拾い上げすばやく元の長さに戻し、リュックにしまい入れる。
「もう行くね。練習の邪魔してごめんなさい」
言いながらリュックを背負い、桐野を振り返ることなく階段を駆け上がると、ここだろうと決めていた角を脇目もふらずに曲がった。
代谷、と呼ぶ声が微かに聞こえたけれど、泉は振りかえることはなかった。
夕飯の支度をして、宿題をして、朝を迎えて学校へ行き、誰もいない家の廊下で涙を流し、時間が経てば疲労感で泣き止んだ。
その繰り返しをしているうちに、泉はなにか大切な物を自らの手で捨ててしまっていたらしい。
「おふくろさんが亡くなった後の自分と重なったのか…」
「………って、私なに話してるんだろ。ごめん、こんな暗い話するつもりなかったのに」
立ち上がった瞬間、不覚にも涙が一粒目頭から流れて鼻を濡らした。
慌てて拭い取る。
「代谷」
ざっと砂を蹴る音がした。桐野が立ち上がったのだろう。顔を背けていた泉にはわからない。
「まっ睫毛が入ったみたい」
足元の警棒を拾い上げすばやく元の長さに戻し、リュックにしまい入れる。
「もう行くね。練習の邪魔してごめんなさい」
言いながらリュックを背負い、桐野を振り返ることなく階段を駆け上がると、ここだろうと決めていた角を脇目もふらずに曲がった。
代谷、と呼ぶ声が微かに聞こえたけれど、泉は振りかえることはなかった。