キミは聞こえる
言ったら、きっと、嫌われる。遠くに行かれてしまう。
それを望んだのは他ならぬ自分だけれど、いざそれが現実のものとなると思うと足が竦んで、喉元で言葉が止まってしまう。
一人になることにはさして恐怖を感じない。
泉は、桐野に背中を向けられてしまうこことが、距離を置かれてしまうことが、なによりも恐ろしかった。
桐野の顔が今までで一番おおきく歪められた。
それがあまりに苦しげで、泉の胸までもが痛みを上げる。
「どうしても、言えないことか……?」
無言のまま、頷く。
桐野の顔に暗い影が落ちた。
長い長い沈黙の後、桐野は一言だけ呟いた。
「……………そうか」
「きりのく―――」
「だったらもう、なにも聞かねぇよ」
泉を遮って、桐野は踵を返した。
吐き捨てられた言葉はあまりに刺々しく、彼の背中からは確かな拒絶を感じた。
とたんに、弁明の言葉を探すことも、袖を掴むことも出来なくなった。
終わった、と思った。
逃げ道はなかった。
言っても背を向けられる。
言わなくてもこうして後ろを向かれた。
「じゃあな」
泉の返事を待つことなく、桐野はあっという間に走り去っていった。
桐野の姿が見えなくなっても泉はその場に立ち尽くしたまま、しばらく動くことが出来なかった。
それを望んだのは他ならぬ自分だけれど、いざそれが現実のものとなると思うと足が竦んで、喉元で言葉が止まってしまう。
一人になることにはさして恐怖を感じない。
泉は、桐野に背中を向けられてしまうこことが、距離を置かれてしまうことが、なによりも恐ろしかった。
桐野の顔が今までで一番おおきく歪められた。
それがあまりに苦しげで、泉の胸までもが痛みを上げる。
「どうしても、言えないことか……?」
無言のまま、頷く。
桐野の顔に暗い影が落ちた。
長い長い沈黙の後、桐野は一言だけ呟いた。
「……………そうか」
「きりのく―――」
「だったらもう、なにも聞かねぇよ」
泉を遮って、桐野は踵を返した。
吐き捨てられた言葉はあまりに刺々しく、彼の背中からは確かな拒絶を感じた。
とたんに、弁明の言葉を探すことも、袖を掴むことも出来なくなった。
終わった、と思った。
逃げ道はなかった。
言っても背を向けられる。
言わなくてもこうして後ろを向かれた。
「じゃあな」
泉の返事を待つことなく、桐野はあっという間に走り去っていった。
桐野の姿が見えなくなっても泉はその場に立ち尽くしたまま、しばらく動くことが出来なかった。