キミは聞こえる
四章-8
翔吾に向けて届けられたのだろうサッカーチームの入会案内書によると、火木土の週三回、そのチームの練習があるとのことだった。
家に帰り、思うように喉を通らない昼食を腹におさめると、泉はふたたび外へ出た。
今度はリュックは背負わずに。
携帯片手に、佳乃にメールで尋ね教わった通りの道を進む。
目指すは鈴森南第三小学校である。
向かう途中、ふいにホイッスルと砂を踏む音とボールを蹴る音が、風に乗って泉の耳に届いた。
古びた看板が見えた。
『鈴森南第三小学校、この先100m』
という指示に従い角を曲がると、看板には100mと書かれていたが、ほんの数歩あるいただけで、学校のグラウンドが泉の右手に現れた。
おそらく門までが100mなのだろう。
ややこしい。
(あれが、案内書の)
頑張って上ったら侵入できそうだなという高さのフェンス越しにグラウンドを見つめる。
いくつものボールが、幼気な子供たちの間で蹴り交わされている。
砂埃があちこちで煙のように舞き上がり、子供たちのユニフォームと靴下を汚す。
中には女の子だろう、凛々しさより可愛らしさが勝っている子供もいた。
周りの子たちより頭半分ほど大きいのがおそらくそうなのであろう。三人いるうちの一人は短髪だが、足と腕を見れば明らかに男子とは身体の造りが違う。
ホイッスルが響き渡ると、次いで集合の声がかかった。
一斉にジャージー姿の中年男のもとへ駆けていく。
あれがおそらく代表者の稲森とかいう男だろう。
サッカーを指導する者だからか、季節を先取りしたように焼けた真っ黒の肌が光っている。
稲森は腕の時計にちらりと目をやると、子供たちに何事かを叫んだ。
すると子供たちは、彼らの父兄らしき大人たちが用意してくれたと見える飲み物のほうへ走っていった。おそらく休憩の合図だったのだろう。
「―――あの、ちょっとよろしいかしら?」
家に帰り、思うように喉を通らない昼食を腹におさめると、泉はふたたび外へ出た。
今度はリュックは背負わずに。
携帯片手に、佳乃にメールで尋ね教わった通りの道を進む。
目指すは鈴森南第三小学校である。
向かう途中、ふいにホイッスルと砂を踏む音とボールを蹴る音が、風に乗って泉の耳に届いた。
古びた看板が見えた。
『鈴森南第三小学校、この先100m』
という指示に従い角を曲がると、看板には100mと書かれていたが、ほんの数歩あるいただけで、学校のグラウンドが泉の右手に現れた。
おそらく門までが100mなのだろう。
ややこしい。
(あれが、案内書の)
頑張って上ったら侵入できそうだなという高さのフェンス越しにグラウンドを見つめる。
いくつものボールが、幼気な子供たちの間で蹴り交わされている。
砂埃があちこちで煙のように舞き上がり、子供たちのユニフォームと靴下を汚す。
中には女の子だろう、凛々しさより可愛らしさが勝っている子供もいた。
周りの子たちより頭半分ほど大きいのがおそらくそうなのであろう。三人いるうちの一人は短髪だが、足と腕を見れば明らかに男子とは身体の造りが違う。
ホイッスルが響き渡ると、次いで集合の声がかかった。
一斉にジャージー姿の中年男のもとへ駆けていく。
あれがおそらく代表者の稲森とかいう男だろう。
サッカーを指導する者だからか、季節を先取りしたように焼けた真っ黒の肌が光っている。
稲森は腕の時計にちらりと目をやると、子供たちに何事かを叫んだ。
すると子供たちは、彼らの父兄らしき大人たちが用意してくれたと見える飲み物のほうへ走っていった。おそらく休憩の合図だったのだろう。
「―――あの、ちょっとよろしいかしら?」