キミは聞こえる
二章-2
「初等部から栄美(えいみ)なの!?」
自動販売機の前で佳乃が驚きの声を上げた。目を見開いて泉をしげしげと見つめる。
「そう」
「うわぁ。すごい……」
感嘆の息をもらす佳乃に、とくに感情も込めず、泉は短くどうもと返した。
そのリアクションなら慣れている。別段びっくりすることもない。
小さい頃から言われ続けていることだから、いまさらすごいね、頭いいねと連発されてもなんの感動も湧かないのだ。
泉は出て来たアイスバーを取り出し、近くのソファーに腰掛けた。同じアイスを手に佳乃があとを追う。向かい側にちょこんと座った。
箱を破く間も佳乃の視線は熱いままだった。
よほど栄美出身がめずらしいのだろうか。
まぁこんな地方に住んでいる彼女たちにとっては夢のまた夢の世界だろうから無理もないけれど。
泉が中等部まで通っていた女学園は、いうなればお嬢様学校である。
学区内だからそこに行く、などという一般的思考ではまず入学不可能な私立栄美女学園。
小学校から入学試験があり、毎年高い倍率を誇る名門中の名門だ。
毎年度末行われる試験に合格しなければ次の学年へは進めないという徹底文道主義で、成績が悪ければすぐ他の公立学校への編入を薦められる。
伸びる可能性のない者はいらないのだ。
才のない者は容赦なく切り捨て、新たな逸材を投入する。
そして、気に入らなければまたすぐに放棄する。
その繰り返しが毎年激しく行われている。
そんな、日々が戦いの学園生活を泉はかいくぐってきた。