キミは聞こえる
 *

(なにかあったのかな、代谷さん)

 用件を済ませるなり無駄話一つ交わすことなく切られてしまった携帯電話を見つめたまま、テスト勉強のため広げたノートの上、頬杖をついて佳乃は泉の電話を思い出していた。

『鈴森南第三小学校へはどう行けばいいの?』
「どうしたんだろ」

 シャープペンシルをアゴにあてたまま、携帯を開いたり閉じたりを意味もなく繰り返す。

(家に知ってる人、いないのかな……)

 そんなことはないだろう。代谷家のあたりも三小学区のはずだ。

 家の人には訊けない事情があったのだろうか。だとしたらなんだろう。

 中途半端の問題も、一度手を止めてからその先ちっとも進まずにいる。解答冊子を開いても、解説を根気強く読んでもまるで納得がいかないのだから困ったものだ。

 イスの背もたれに身体を預けて天井を仰ぐ。

 とつぜん携帯が鳴り響いた。

 待っていましたとばかりに勢いよく身体を起こし、携帯を開いた次の瞬間、


「!?」


 佳乃は目を見開き、息を止めた。
 たちまち鼓動が速くなる。

 小野寺淳くん、と登録どおりの名前が画面に表示される。

 しかし、ここまで驚いたのは、久しぶりに彼からメールが着たからではない。


[話があるんだ。今からちょっと出てこれるか]

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