キミは聞こえる
「金があって、頭もよくてか。すげぇよな」
「つか桐野てめ。なんで代谷さんのこと呼び捨てにしてんだよ。いつの間にそんなに仲良くなったんだ?」

 桐野の後ろにいた男子たちが問い詰めると、桐野は笑って、いいだろー、と胸を張った。

「俺たち友達なんだよな。代谷?」
「ご近所さんなので」
「だってよ桐野」

 軽くあしらうと男子二人が噴き出した。

「ちょっ、代谷なんだよそれ。俺たち友達じゃん。まったく、つめてーなー」
「どんまい。アイスどれにするよ」
「おーそうだった」

 三人が離れて行くと、佳乃は前屈みになってなにやら含みのある囁きを泉に向けた。

「桐野君と仲いいんだね」
「家が近いだけ」
「それだけ?」
「それだけ」
「ほんとに?」

 重ねて尋ねる佳乃にイラッとした。

 そうだと言っているのに。なぜ何度も言わせるのだ。

 どこか楽しげな表情がいっそう泉の苛々を増幅させる。

 アイスを加えたまま無言でいると、泉の心中を察したのか佳乃の顔に俄に影が落ちた。姿勢を戻しどこか落ち込んだ様子で俯きがちにアイスを口に運ぶ。

 ぎこちない空気が二人の間に流れた。

 お互い、口を開くタイミングが見つけられない。
 黙々とアイスを食べ、時間をつなぐ。

 そんな二人に気づいているのかいないのか、またも桐野が口を出してきた。

「そういえば二人は部活決めた?」

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