キミは聞こえる
「すごい人気だね、さすが桐野君」
「ご両親もいるって気づいてないよね」

 出身中学から応援に来ている女子生徒も多いそうだ。

 佳乃は、えっ、そうなの、と驚いたがすぐに、兄弟二人もスタメンじゃあ来ない親のほうがいないか、と納得して、なおも続く桐野君きゃーに苦笑した。


 前半戦を互いに0点に抑えたまま後半戦に突入し、先制点を上げたのは相手チームだった。

 しかし鈴南も負けてはおらず、悠士の華麗な足さばきが妙技を次々にくり出し敵という敵を亡き者としていくと、点を取られてからわずか数分の間に引き分けの分をもぎ取った。

 鈴南側の客席から大歓声が湧き上がり、会場がどよめきに包まれる。

 悠士のもはやパフォーマーと呼ぶに相応しい動きに下がりかけていたチームの士気は持ち直され、それぞれが己のやる気を鼓舞すると、試合は前半戦同様追いつ追われつのもどかしい接戦に戻った。



 ―――そして、残り数分となったところで、ふたたび試合に転機が訪れた。
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