キミは聞こえる
 かゆそうに爪を立てる。

 すかさずのぞき込む。

≪テープのところがかぶれちゃったのかな≫

 翔吾の桜貝のような爪が点滴の針を固定するための医療用テープをはがそうとする。

 勢い余って一緒に針まで抜いたら危険だと思い、泉は立ち上がった。

≪いま、看護士さん呼んでくるからちょっと我慢しててね≫

 鞄をそのままに泉は廊下に出た。

 ナースステーションへと足を運ぶ途中、ベッドに備え付けられたナースコールを利用すれば早かったと気づいたけれど、もうナースステーションは目の前だった。

 ちょうどよく友香の後ろ姿が見えた。


 そして、


(あ―――)


 彼女の奥には、彼らもいた。
< 477 / 586 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop