キミは聞こえる
五章『災難』
土曜日。
めずらしく友香と休みが重なったため、隣町まで買い物に行こうと誘われた。
夏物のチェックと春物のバーゲンが目当てで、両手に持ちきれないほどの服を友香は買い込んだ。
たくさんの袋のうちいくつかは泉の服でもあるけれど、どれもシフォン地だったりこれからの時期にいいだろうというかぎ編みのベストだったりと、生地の薄い軽い服ばかりを選んだため、
店が違う故の袋の数だが、重量としては友香の比ではない。(値段が下がっているコートやブーツも友香はあれこれと店員に渡していた)
日頃のストレス発散も兼ねているのだという。
そうなのか、それはご苦労なことだ、と友香を労う一方で、これだけ買うならはじめから車を回せばよかったのではないか、とも思う。
運転が出来ないほど体力がなければはじめから買い物になど出かけはしないだろうから、車を走らせることはできただろうに。
まぁ、いまさら文句を言ってもはじまらない。
久しぶりに乗った電車に揺られ、気分を切り替えるように田舎の風景に目を転じる。
『いったい翔君となにがあったの?』
病院での翔吾の一件のあと、やはり友香に問いただされた。
翔吾になにをしたのかと。
『なにもしてない』
そう返したけれど、友香は納得してはくれなかった。当たり前だと思った。
しかし、打ち明けることは出来なかった。
桐野にばれただけでもずいぶんな打撃であるのに、友香にまで泉の能力についてばらすわけにはいかない。
だから、泉は友香に、翔吾に対してなにをしたか、ではなく、彼の心の強張りを溶かすための翔吾の好きなことを教えた。
『たまたまある人に聞いたの。翔くんね、サッカーが好きなんだって。だから、今度サッカーを一緒にしてくれる人を紹介してあげるって言ったの』
『そうしたら、ああなったって言うの?』