キミは聞こえる
二人が両想いであるということを知ってから、幾度となくこんなやり取りが交わされている。
一度はっきり打ち明けてしまうと、好き、というハードルの高い言葉も実に簡単に泉の舌を滑り落ちるようになった。
彼氏ではないにせよ、彼は泉のことをとても大切に想ってくれている。
故に、泉が、桐野、小野寺以外の男子とちょっとでも口を利くと、途端に不安になるらしく、子供のようにすねてしまう。
そんなとき、好き、と諭すように言ってあげると、彼は喜ぶ。
しかし、素直に笑顔にはならず、赤面して顔を背けてしまうところが可愛いヤツだと思う。
「矢吹となにを話したんだ?」
「小さい頃の夢の話、千紗と知希さんは友達以上の話」
「ちょっ、代谷のガキの頃の夢なんて俺知らねぇっ!」
膨れる桐野、ふふふ、と泉は笑って、なんでしょう、と首を傾げる。
「当てられたらいいものをあげよう」
「選択肢は? せめて四つくらい」
「そんなのしたら確率がぐんと上がって面白くない」
「……ケチ」
「考えている間に私から質問。桐野くんの小さい頃の夢は?」
「俺? 俺はサッカー選手」
もう叶っているじゃないか。
と返すと、プロのだよ、と当たり前のこと聞くなよという顔で言われた。
数分後、桐野は、ギブアップだ、と首を振った。
「女の子だったら普通お花屋さんとか言うのかも知んねーけど、どうしても代谷とは重なんねぇ」
失礼な男だ。
私は、ちゃんと、女の子だ。
花が似合わないとでも言いたいのか。
「1、美容師 2、外交官 3、歌手」
桐野はしばし小さく唸って、
「1!」
「ハズレ」
「えっ、じゃあガキの頃から外交官なんてすげぇ仕事に憧れてたってのかよ」
目を見開く桐野に、泉は正解を言おうと開けかけた口を噤んだ。
打ち明けるタイミングを自ら消滅させてしまった。
沈黙する泉に違和感を覚えたらしい桐野が彼女の顔をのぞき込み、しばしそうして、はっと眉を上げた。
「………えっ! じゃあ、も、もしかして」
一度はっきり打ち明けてしまうと、好き、というハードルの高い言葉も実に簡単に泉の舌を滑り落ちるようになった。
彼氏ではないにせよ、彼は泉のことをとても大切に想ってくれている。
故に、泉が、桐野、小野寺以外の男子とちょっとでも口を利くと、途端に不安になるらしく、子供のようにすねてしまう。
そんなとき、好き、と諭すように言ってあげると、彼は喜ぶ。
しかし、素直に笑顔にはならず、赤面して顔を背けてしまうところが可愛いヤツだと思う。
「矢吹となにを話したんだ?」
「小さい頃の夢の話、千紗と知希さんは友達以上の話」
「ちょっ、代谷のガキの頃の夢なんて俺知らねぇっ!」
膨れる桐野、ふふふ、と泉は笑って、なんでしょう、と首を傾げる。
「当てられたらいいものをあげよう」
「選択肢は? せめて四つくらい」
「そんなのしたら確率がぐんと上がって面白くない」
「……ケチ」
「考えている間に私から質問。桐野くんの小さい頃の夢は?」
「俺? 俺はサッカー選手」
もう叶っているじゃないか。
と返すと、プロのだよ、と当たり前のこと聞くなよという顔で言われた。
数分後、桐野は、ギブアップだ、と首を振った。
「女の子だったら普通お花屋さんとか言うのかも知んねーけど、どうしても代谷とは重なんねぇ」
失礼な男だ。
私は、ちゃんと、女の子だ。
花が似合わないとでも言いたいのか。
「1、美容師 2、外交官 3、歌手」
桐野はしばし小さく唸って、
「1!」
「ハズレ」
「えっ、じゃあガキの頃から外交官なんてすげぇ仕事に憧れてたってのかよ」
目を見開く桐野に、泉は正解を言おうと開けかけた口を噤んだ。
打ち明けるタイミングを自ら消滅させてしまった。
沈黙する泉に違和感を覚えたらしい桐野が彼女の顔をのぞき込み、しばしそうして、はっと眉を上げた。
「………えっ! じゃあ、も、もしかして」