キミは聞こえる
「二学期と違って定期テストは出題範囲が狭くなる。今回の中間試験では教科書を隅々まで読んでいない生徒が多く見られた」

 ああそういやこの学校の教科書はずいぶんと薄いのだったな、と思い出す。

 故か、テストにいかにも出そうな重要ポイントが、メインの文章の脇にある補足スペースに多く記述されている。

 限られた時間数の中でその部分まで懇切丁寧に説明する教師は少ない。

 授業で触れないのだからテストにも出ないだろうという考えは甘い。

 もっとも――

(栄美の教科書は補足の部分もメインだったけどな)

 あくまでも補足は補足として扱われる。そしてそのほとんどがテストには必要ない補足中の補足である。

 やはり鈴森南と栄美ではレベルが違うのだとわかる。
 教科書はそのもっともわかりやすい比較対象であった。

 ぐしゃぐしゃになったプリントを広げ、自身の点数を見れば、二位との差が五十点以上もある。

 理事長が案じて言葉をかけてくれるのも頷けた。

 だが――。

 途端、思い出しそうになる理事長室でのやり取りを、泉はプリントに目を走らせることで振り切った。

 そして、見つけた。


≪――げっ、設楽って人、8番!?≫
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