キミは聞こえる
≪エスパーなんてそんなものでしょ。普通の人間とは違う。そして、違う力を持っている以上、僕らが属するのは一般人よりむしろアニメのキャラクターだよ≫
≪それはあんただけ。意識の問題。私はどこからどう見ても普通で平凡の女子高生≫
≪ちょっと間の抜けた感じがするけどね、まぁ見た目はそれでもいいよ≫

 ……こんの野郎。

 いかにも穢れ無き純情そうな笑みを浮かべておいて、口ではしれっと嫌味を言う。
 なんてヤツだ。

 ふんっ、と泉は鼻を鳴らし、覚えておけ、次は間違いなく貴様の額に恨みの鉄拳ぶちこんでやる、と胸の中で呟いた。

 ところが、そんな心さえ設楽はちゃっかり読み取って、やれるもんならやってごらんよ、と無駄に高い鼻をさらに鼻を高くする。

≪だったらなに……中身は違うと?≫
≪中身は僕と一緒で非凡だよ≫

 全身が一斉に粟を吹き、つま先から脳天までぞわぞわしたものが一気に這い上がる。

 硬直する泉に気づいてか知らずか、設楽はさらに事も無げにこう続けた。

≪おそらく、代谷サンは"覚醒"したのだと思うよ≫

 およそ常人には使われない単語に泉は眉をひそめる。

≪………か、くせい?≫
≪そう、覚醒。どうやって繋ぎを習得したのか、その過程は僕には分からないけど、おそらく繋ぎの力を解放したときに、眠っていた君本来の力が目覚めたんだと思う≫

 あのときの衝撃波は間違いなく代谷サンの力だったんだ、と設楽は言いきる。

≪その根拠は? あんたの言う波動だの衝撃波だのが本当に私から出たものであるのか、あんたが単にゲップしただけなのか、そんな曖昧で非現実的な話、すんなり頷けるわけない≫

 バスケの試合場は、確かサッカーの試合会場からはだいぶと離れていたはずだ。

 ≪繋ぎ≫には確かに成功した。それは認める。

 しかし、だからと言って設楽の言う覚醒―――それによって起こる衝撃波―――遥か遠くで試合中だった設楽にまで届く力が、泉の中から放出されたとはとても思えない。

 というか、思いたくない。

 設楽はアゴに指を乗せて、しばし思案する。


≪……僕の体験からすると、この"繋ぎ"の力には元より秘匿的な作用が働いている気がする≫
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