キミは聞こえる
 力自身が、読心術は守られるべき存在であると理解しているように。

 意思を持って、自らが外部に漏れることを避けているかのように。

≪ある種の殻に守られてる状態のその力が解き放たれたとき、奥底でくすぶっていた力が一気に噴き出したんじゃないかな≫

≪衝撃を感じるほどの威力は、閉じこめられ続けた反動ってこと?≫

≪うん。まぁ専門家じゃないからそうだとはっきりとは言えないけどね。でも、それだけの力なんじゃないかな、心と心を繋ぐってことは≫

 確かに、そう言われれば悔しいが納得出来ないこともない。

 設楽にしかその波動が伝わっていないというのも、二人の共通点である読心術による影響を裏付けるものだ。 

≪……ただ、一つ気になることがあるんだけど≫
≪気色悪い話なら余所でやって≫
≪真面目な話≫

 信憑性に大いに欠けるが仕方なく先を促す。≪…だったらどうぞ≫

≪さっき僕が、僕と心を繋いだのは代谷サンでしょ、って訊いたとき、代谷サンずっと全力否定したよね≫
≪もちろん。だって、してないから≫
 
 設楽はじっと泉を見つめる。教師に注意されたらどうするつもりだ。

 仮にも朝礼中、前向け前。

≪それって、じゃあ………"無意識に"ってことだよね≫

 それまでの軽い男が、何故かずいぶんと(人として)まともな口調で喋り始めた。

 だからなんだ、と自身に突っ込みはするのだが、見過ごせない妙なもやもやが胸のあたりに溜まっていて、

 それがどうにも気にかかる泉である。

 こいつのことなど、ノミ同然にどうでもいいのに。

≪認めたくないけど………もし私から繋いだんだとしたら、そうなんじゃない?≫

 ぶっきらぼうに応えると、設楽はまたしても黙り込んだ。

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