キミは聞こえる
「話が終わったら職員室に寄ってくれ」
「正当な理由でない限り面談はしませんと申し上げました」

 これという表情を浮かべず、手塚は二人の顔を交互にみつめる。

「代谷、そうじゃな――」
「理事長、代谷です」
 
 安田を無視して理事長室のドアを叩くと、奥から、どうぞ、と返事が聞こえた。

「先生」

 ドアを引いて元担任を促し、自身も中へと足を踏み入れると、泉は背を向けたまま理事長室のドアを閉めた。

 担任に対してあるまじき無礼行為だが、安田と口を利く気分ではなかった。

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