キミは聞こえる
 眩しそうに手塚は目を細め、泉を振り返る。

「……わ、たしは、どうしたら、いいんでしょうか」

 言ってから、ああ、と口の中で唸る。

 何を、言っているのだろう。どうしたらいいかなど、そんなの自分以外の者が決められるはずもないのに。

 ほんの数ヶ月で代谷もずいぶんと愚か者に成り下がったものだ、などと思われたらどうしよう、と泉は俯く。

 しかし、それでも――。

(せんせい)

 泉は手塚の意見が聞きたかった。


「私に返事を求めるということは、私に背中を押して欲しいと言っていることに他ならないのではないか」


 静かに、手塚は問いかける。

 そう、なのだろうか……いや、きっとそうなのだろう。

 私は手塚に掌を差し伸べて欲しいと思っているのだ。

 私と共に栄美へ帰ろうと、私の答えはすでに代谷の手の中に――その資料そのものにあると、言って欲しいと思っているのだろう。


 踏み出す勇気を分けて欲しいのだ、私は。


「だが、それを私に言わせるのは自分一人が責任を負いたくないからだろう? 私にも責任を与えたい。――そうではないのか?」
「……」


 言葉に詰まって泉は俯く。

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