キミは聞こえる
桐野の背と、手塚の背と、眼裏に交互に浮かび上がる二つの広い背中。
どちらを追いかけてもきっと悲しい思いはせずに済むだろう。
だが、どちらを追いかけても、少なからず後悔することも泉はわかっていた。
背後の校舎を振り仰ぎ見て、泉はにわかに顔をしかめた。
頭がひどく痛いと思った。
……今日は朝からいろいろとありすぎた。
「帰ろうか」
静かに問えば、「うん」と弾んだ声が返ってくる。
その声に上手く笑顔を返す自信がなくて、代わりに脚を動かした。
二嶋は、帰ってきたぞ。
頭の奥で木霊する手塚の声を振り払うように、泉はいつもよりほんのすこしだけ早く歩度を上げて帰路を進んだ。
どちらを追いかけてもきっと悲しい思いはせずに済むだろう。
だが、どちらを追いかけても、少なからず後悔することも泉はわかっていた。
背後の校舎を振り仰ぎ見て、泉はにわかに顔をしかめた。
頭がひどく痛いと思った。
……今日は朝からいろいろとありすぎた。
「帰ろうか」
静かに問えば、「うん」と弾んだ声が返ってくる。
その声に上手く笑顔を返す自信がなくて、代わりに脚を動かした。
二嶋は、帰ってきたぞ。
頭の奥で木霊する手塚の声を振り払うように、泉はいつもよりほんのすこしだけ早く歩度を上げて帰路を進んだ。