キミは聞こえる
「聖華さん、それで父さんはいつ?」

 たまらず泉が重ねて尋ねると、友香を除く代谷家全員の視線が聖華に集中する。

 膝に乗せていたティーカップをテーブルに戻すと、おもむろに聖華は泉へと向き直った。

 固唾を呑んで言葉を待つ一同を聖華はゆっくりと見回す。

 泉ちゃん、と静かに名を呼ぶその眼差しに、泉は何故か微かな胸騒ぎを覚えた。


「泉ちゃん、実はね――」



 果たして、胸騒ぎは確かな現実となって聖華の口から吐き出された。



「藤吾さんは、急遽アフリカの方へ行かなくてはならなくなったの」



 水を打ったようにあたりがしんと静まり返る。


 はっと息を呑む音がした。誰のかはわからない。

 そんな、という短い呟きがいくつか彼女の耳に届いたけれど、どれが誰のであるかまではわからなかった。そんなことは今はどうでもよかった。


(ア、フリカ……?)

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