キミは聞こえる
「あ、あのね、代谷さん」
「なに」
訊くと、佳乃の視線が泉のジャージ、正確にはポケットに向けられた。
泉はポケットに手を突っ込んで、中に入ったある物を取りだし、見せた。
「これのこと?」
「うっ、うん!」
首を傾げる泉に、佳乃はがくがくと頷いた。
わかった、わかったからそんなに強く首を振らないでくれ。
ふとした拍子に外れても責任は負えない。
「携帯がどうかしたの」
さきほどニキビ男にアドレスを聞かれて、持っていないと嘘をついた携帯である。
これがなにかと差し出すと、佳乃は自分の携帯を取りだし、思い切ったように言った。
「よ、よかったら、私とアドレス交換しないっ!?」
……は?
泉は一瞬なにを言われたのかわからず、ぽかんと口を開けたまま目をぱちぱちとさせた。
赤面する意味がわからなかった。
わからなかったけれど、必死な顔が可笑しくて、可愛くて、泉は噴き出しそうになるのを堪えた。
「別にいいけど」と何気ないやり取りのように淡々と言って、泉は携帯を開いた。
「い、いいの?」
「いらないの?」
「いっ、いる! いります! ちょっと待って」
慌てて佳乃は携帯を開き、赤外線通信をかまえる泉に合わせて黒い部分を見せた。
「いくよ」
「どうぞ!」
ぷるぷる震える佳乃の携帯に番号とアドレスを送信した。
佳乃が連絡先を送ってくる。
アドレス帳の登録数がおそらく学校一少ないだろう泉は、それゆえに登録作業というものが慣れておらず、軽く混乱しながら携帯をいじっていると、
不意に画面がメール受信のそれに変わった。
開くとそれは佳乃からだった。
「なに」
訊くと、佳乃の視線が泉のジャージ、正確にはポケットに向けられた。
泉はポケットに手を突っ込んで、中に入ったある物を取りだし、見せた。
「これのこと?」
「うっ、うん!」
首を傾げる泉に、佳乃はがくがくと頷いた。
わかった、わかったからそんなに強く首を振らないでくれ。
ふとした拍子に外れても責任は負えない。
「携帯がどうかしたの」
さきほどニキビ男にアドレスを聞かれて、持っていないと嘘をついた携帯である。
これがなにかと差し出すと、佳乃は自分の携帯を取りだし、思い切ったように言った。
「よ、よかったら、私とアドレス交換しないっ!?」
……は?
泉は一瞬なにを言われたのかわからず、ぽかんと口を開けたまま目をぱちぱちとさせた。
赤面する意味がわからなかった。
わからなかったけれど、必死な顔が可笑しくて、可愛くて、泉は噴き出しそうになるのを堪えた。
「別にいいけど」と何気ないやり取りのように淡々と言って、泉は携帯を開いた。
「い、いいの?」
「いらないの?」
「いっ、いる! いります! ちょっと待って」
慌てて佳乃は携帯を開き、赤外線通信をかまえる泉に合わせて黒い部分を見せた。
「いくよ」
「どうぞ!」
ぷるぷる震える佳乃の携帯に番号とアドレスを送信した。
佳乃が連絡先を送ってくる。
アドレス帳の登録数がおそらく学校一少ないだろう泉は、それゆえに登録作業というものが慣れておらず、軽く混乱しながら携帯をいじっていると、
不意に画面がメール受信のそれに変わった。
開くとそれは佳乃からだった。