キミは聞こえる
「き、昨日まであんなところになかったのに……なんで」
まるで状況が飲み込めていないらしい千紗はひどく混乱しているような顔で佳乃の握りしめる財布を凝視していた。
「ね、ねえ、響子……」
「ん、うん……ま、まあよかったんじゃないの? これで変に周りを騒がせなくてすむじゃない」
裸眼でいまひとつ視野がはっきりしないのか、響子は目を細めて手をフラフラ揺らしている。どうやら眼鏡を探しているらしい。
眼鏡の装着が完了すると改めて佳乃の持つ財布を見、それから千紗へ首をめぐらせると、
《私らがしたこともばれずにすむし》
ふいに"声"が流れ込んだ。
そのことを眼差し一つで読み取ったらしい千紗は、小さく頷き返した。
ほっとした。
ここで、万が一にも、
『栗原さんが隠してて、朝になったら出そうとか考えてたんじゃないの』
とでも言われようものならどうしようかと、ちょっぴり心配していたのだ。
妥当な判断をくだした響子に、千紗が思いの外素直に了解してくれてよかった。
予想外の出来事に驚き、また、寝起き直後のせいもあってうまく頭が回らないのかもしれない。
なにはともあれ、一件落着である。
「よ、よかったね、千紗ちゃん」
「……そ、そうだね」
自分のことのように喜んで財布を差し出す佳乃に千紗はぎこちなく笑い返した。
ほんとうによかった。これで面倒から解放される。
肩の荷が下りたところでもう一眠りしようかと布団に戻ろうとして、
「ねえ、朝ご飯の時間、何時だっけ?」
泉のひと言に全員が時計を見上げる。
現在、7時43分。
響子がぽつりと言った。
「7時30分じゃなかった?」
予告していたように廊下から誰かが走ってくる足音がする。
「いつまで寝てるんだ、おまえらーッ!」
きゃー。
まるで状況が飲み込めていないらしい千紗はひどく混乱しているような顔で佳乃の握りしめる財布を凝視していた。
「ね、ねえ、響子……」
「ん、うん……ま、まあよかったんじゃないの? これで変に周りを騒がせなくてすむじゃない」
裸眼でいまひとつ視野がはっきりしないのか、響子は目を細めて手をフラフラ揺らしている。どうやら眼鏡を探しているらしい。
眼鏡の装着が完了すると改めて佳乃の持つ財布を見、それから千紗へ首をめぐらせると、
《私らがしたこともばれずにすむし》
ふいに"声"が流れ込んだ。
そのことを眼差し一つで読み取ったらしい千紗は、小さく頷き返した。
ほっとした。
ここで、万が一にも、
『栗原さんが隠してて、朝になったら出そうとか考えてたんじゃないの』
とでも言われようものならどうしようかと、ちょっぴり心配していたのだ。
妥当な判断をくだした響子に、千紗が思いの外素直に了解してくれてよかった。
予想外の出来事に驚き、また、寝起き直後のせいもあってうまく頭が回らないのかもしれない。
なにはともあれ、一件落着である。
「よ、よかったね、千紗ちゃん」
「……そ、そうだね」
自分のことのように喜んで財布を差し出す佳乃に千紗はぎこちなく笑い返した。
ほんとうによかった。これで面倒から解放される。
肩の荷が下りたところでもう一眠りしようかと布団に戻ろうとして、
「ねえ、朝ご飯の時間、何時だっけ?」
泉のひと言に全員が時計を見上げる。
現在、7時43分。
響子がぽつりと言った。
「7時30分じゃなかった?」
予告していたように廊下から誰かが走ってくる足音がする。
「いつまで寝てるんだ、おまえらーッ!」
きゃー。