キミは聞こえる
―――この英文てどう訳すのかな?
そう訊かれて、教科書の隅に記載された正解を指さしてやった気がする。
それも、無言で。
そして、思った。
そんなのもわかんねーのか。
(……)
あれが、俗に言うアタックというやつか。
振り向いてもらおうと努力していた姿だったのか。
これっぽっちも気づかなかった。
あまりに相手にしていなかった自分、もっと他人に興味を持とう。
そして、もう少し乙女心というものを学ぶべきかもしれない。
……もはやめんどくさいとか言ってられる場合じゃない気がする。
好意を寄せていることに気づかずとも、社交性のなさにそもそも問題があるだろう。
お愛想という言葉を一度辞書で引いて、机に貼ってみようか。
失礼すぎたと思う。
すまん―――泉は心の中で謝罪の言を紡いだ。
「なんで自分のクラスの、それも話しやすいだろう同姓の生徒がすぐ隣に座ってるのに泉に質問してたと思ってンの?」
泉は設楽とかいう代表に見えないよう首を縮こめ、恐る恐る口を開いた。
「……好き、だから?」
上目寄りに聞き返すと千紗・響子は「そう」と深く頷いた。