キミは聞こえる
「モテない男のひがみは見苦しいねェ」

 響子が頬杖を突いて、呆れたように箸を振った。

 脇からぬっと千紗が首を伸ばす。

「こいつらのことは気にしなくても全然いいんだからね泉。設楽は小学校の頃から人気あって、気が利くし、物わかりいいし、とにかく女に優しい! 本人目の前にして言うのもなんだけど、桐野とどっこいどっこいにモテてたんだよ。だけどね、付き合うなら絶対設楽。設楽があそこまで一人の女に執着するのはめずらしいし、賢い泉には察しのいい設楽がきっと合うと思う」

 ………ほんとうに、本人を目の前にして言いたい放題だ。

 要するに千紗は、二大人気男で泉に釣り合うのは、KY男代表"桐野"ではなく、頭の回転が早いバスケ部代表"設楽"だと言いたいらしい。

 端的に言うと、泉にはバカが合わないと。そういうことか。


 ……さすがに桐野に同情する瞬間だった。


 でもまぁ、うん。

 たしかに"空気読めない"よりかは、バスケ部のほうが聞こえはいい。


 だが―――。

 
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