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夕方になり、央と祖父は仕事中
だった為、手伝いの人に帰宅
すると告げて、家を出た。

ビルに向かう途中の河原に
秦利の姿があった。
座りながら、川に向かって、
石を投げている。

河原に降りていくと、秦利は
石を投げるのを止め、想は立ち
上がったまま、遠くを見つめ、
呟くように言った。

「お母さんが死んだとき、
お兄ちゃんは泣かなかった。
お爺ちゃんは僕とお兄ちゃんを
守るって言ったんだ。でも…
僕は分からないんだ」想が一瞬
悲しい顔を見せた。

いつも笑っている想。
だが、今は違った。悲しそうに、
寂しそうな顔を見せていた。



祖父、銀次郎は想に対して
接し方が分からず、常に悩んで
いた。

お母さん子だった想。

束縛を嫌い、型にはまらない想
が何を考えているのか、分からず
どうも上手くいかない。

想のことは愛している。
孫としてだけではなく、自分の
子のように……

「鈴夏…」写真の中で笑う娘
に銀次郎は話しかけた。
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