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『俺、男やから。男は泣かない』
想はあの日以来、涙を見せて
いなかった。

拳は煙草に火をつけ、眠る想の
頭を撫でた。

もう高校生になっていた。
知らず知らずのうちに、想は
もう大人になっていた。

子供だと笑っていた頃とは
比べられないほど、成長し、拳達
より強くなったのだろうか?

「まだ子供だな…」幼さの残る
寝顔を見つめ、拳は呟いた。



拳が総二郎に連絡し、すぐに
総二郎がやってきた。

拳は想の傷の理由を聞くと、
煙草に火をつけ、総二郎に
対して笑った。

「で、お前はどうよ?
俺達の元に想が居ていいんか、
央の元に行かせた方がいいのか
って悩んでんだろ?」総二郎
とは長い付き合いだ。

それに保護者として、拳も同じ
ことを悩んでいたからだ。

本当の家族である想の兄、央。

母と自分を捨てた父親に対し、
想は何を考えているのだろう。

兄のことは好きでも、父親が
憎い為に本当の家族を受け入れ
られない想。

本当の家族では無い総二郎達は
想には邪魔ではないだろうか?

常に考えていた。
しかし、分からなかった。答えを
出すのは想自身だからだ。
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