宮地岳線

やっと参拝の順番がまわってきた健太は、今年の抱負なんかそっちのけで、一心にこう祈った。
「どうか、いつまでもあの人に逢えますように…」

しかし、宮地岳線廃止の噂は真実(ほんとう)だった。
健太の切なる願いは、どうやら聞き届けられなかったらしい。
但し、全線廃止ではない。
利用者の最も少ない、三苫駅の一つ先の新宮(しんぐう)から津屋崎間を、四月一日をもって廃止する、ということだった。ようするに、部分廃止。
この区間にはもちろん、健太が利用している宮地岳駅も含まれている。確かに、津屋崎行きの電車は三苫駅で殆どの客が降りてしまうので、あとはいつもガラガラだ。
貝塚行きの場合はその逆で、三苫駅から急に混雑する。ならばいっそ、儲からない区間は無くしてしまえ、というわけだろう。
廃止翌日からは、同区間は代替えの路線バスを運行するらしい。但し、運賃は電車よりも割高。
いづれにせよ、四月からの通学に支障をきたす大事件であることには変わりない。
そして、“あの人”にも逢えなくなる…。
健太にはむしろ、そちらの方が大事件だった。
「どうしてだよ…」