Strange

「やぁ、いらっしゃい。」
扉の前で秘密基地へと入るのをためらっていた翔に、扉を開けてそう声をかけてきたのは藤堂だった。
いつも通りの笑顔で迎え入れられ、とっさに笑顔を作ろうとした翔だったが、引きつった笑顔を返してしまっていた。
「アリスちゃんとリョクくん、もう来ているよ。」
言われて指定席へと視線をやると、二人の姿を認識することができた。
一度大きく深呼吸をしてから二人のそばへと行き
「久しぶり」
いつもどおりに声をかけようとしたものの声のトーンはどこか低く、笑顔もさっき藤堂へむけたものよりさらに引きつってしまっていた。
「あ…えと、リョク仕事は大丈夫だった?」
「うん、今回はちゃんとマネージャーさんにお休みをもらってきたから大丈夫。」
アリスの顔を見る事ができずに席に座らずリョクに話しかける。
「そっか。…えっと……」
「ショウタ、座って。」
何とか会話をつなごうとあがいてみたもののうまくいかず、アリスに言われてとまどいつつもリョクの隣に腰かけた。
向かい合うようにアリスの顔を見てアリスの瞳の色がこげ茶色な事にすぐに気がついた。
「…目、コンタクト外してきたんだね。」
アリスは一瞬きょを疲れた感じに驚いて
「うん、今日は…私はアリスとしてじゃなく私として二人に話さなくちゃいけない事があったから。」
どこか悲しげに微笑んで、小さな声で話を始めた。

「私は…アリスじゃないの。」
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