Strange
「死ぬ気があるなら生きろ!だなんて矛盾してると思わない?生きていたくないから死のうとしたのにね。」
あまりにも明るく話すアリスを美月は見つめる。
「その人が言うには人間死ぬ気になった時に死んだら損するから、どうせ死ぬなら何か大きい事を成し遂げてからにしなさい!なんだって。」
「大きい事?」
「例えば宝くじで一等を当てるとか!」
沈黙があって、目があった二人は同時に吹き出していた。
「それじゃいつ死ねるかわからないね。」
一通り笑い終わった美月が言うとアリスはその言葉に笑いながら同意して、一呼吸おいてから『でも』と真剣な表情を見せた。
「でも、こうも言われたの。死にたい時に死ねるなんて幸せな事だって。」
「……。」
「世の中には生きたくても生きられない人がたくさんいて、死にたくてもいろんな問題があって死ねない人もたくさんいる。その中で自分の死を自分で決められるなんて幸せだって。……その時の私はまだ10歳でね、その言葉の本当の意味なんて半分も理解できなくて、でも、自殺なんてしちゃいけないんだって事だけはわかったかな。」
そこから二人はただ無言で空を見つめていた。
雲一つない空には三日月と星がただ輝いていた。
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