Strange
【別の日】
「ねぇ、アリスは退院したら何がしたい?」
なんとなく病名を聞きそびれて聞きづらくなっていた美月だったが、ふいにそんな事を思って、心の中の問いかけを無意識に口にしていた。
「そりゃあ青春をエンジョイしたいに決まってるわ!私の青春入院生活で終わらせてなるもんですか!退院したら友達作って、恋もして、思いっきり人生楽しんでやるんだから!」
中庭のベンチでグッと拳を握って力説するアリスの上で、茜色の空に数羽の鳥が仲良く列を作って遊んでいる。
「青春を楽しむって…どんな事するの?」
「ん~、とりあえず春ならお花見、夏なら花火、秋ならおいしいものを食べにいろんなお店回ったり、冬は鍋パーティーとか!とにかく楽しいと思う事をかたっぱしからすればいいのよ!」
中庭の木がアリスの言葉にうなづくように風に揺られて幹をしならせた。
「それから風船を飛ばす…かな。」
「風船?」
「そう、風船。」
「風船飛ばしてどうするの?」
「ロマンを感じるの☆」
「またロマンだ。」
言ってクスクス笑う美月に口を膨らませて講義しようとしたアリスだったが、フッとふきだして一通り笑い終えると
「私も昔同じ事言った気がする。」
と、楽しそうに言った。
「?」
「昔、私の自殺を止めたおじいちゃんがね、よく言ってたの“ロマンを求めて生きてこそ人生は楽しいんだ!”って。昔はよくそのおじいちゃんの病室に通って遊んでもらってたから私にはもうロマンって言葉が染み付いちゃってるのかも。」


< 111 / 131 >

この作品をシェア

pagetop