Strange

「いゃ、自己紹介が遅れてしまったね。」
カウンター席に座った翔に水を出しながら男性が話しかけてくる。
「私は藤堂。この店のオーナーをしているもので、こっちは妻の美砂。」
「えっ、奥さんなんですか？」
藤堂が妻と言って紹介したのは先ほど出迎えてくれた店員の女性だった。
翔の驚きようが面白かったらしく
「あぁ。私が惚れ込んで口説き落としたんだ。」
藤堂が笑い混じりに答えると
「私が23歳でこの人が35歳だから歳の差が12歳なの。」
美砂と紹介された女性が笑いながらそう付け加えた。
「はい、どうぞ。」
美砂は紅茶とシフォンケーキを翔の前に置く。
「覚めないうちにどうぞ。」
藤堂に進められ、紅茶をゆっくり口に含む。
「…おいしい。」
それは本当に美味しい紅茶だった。