Strange
9時50分。
どうやら遅刻はしなくてすんだらしい。
ファミレスの前で時計を確認し中へ入る。
店内を見渡すとリョクの姿を発見した。
携帯を眺めてため息をついていたリョクは、
翔には気づいていないようだったので
「リョク。」
リョクが座っている場所に近づき声をかけながら肩を叩く。
「うわっ!!!!!」
リョクはビクリと肩を震わせ、
急に大きな声を出された翔は目を丸くした。
「あっ…えっ?ショウ…た?」
どうやら翔を認識したらしく分厚い眼鏡の向こうの瞳がパチクリとしているのが見えた。
「大丈夫?」
リョクの向かいの席に座りながら問いかける。
「あぁ、うん。大丈夫驚かせてごめん。」
リョクはそれだけ言って携帯をポケットに入れる。
その携帯はアリスから渡されたものとは違うものだったのでリョクの私物なのだろう。
何も言わないから何も聞いてはいけない。
それがルール。
「今日は遅くなるらしいけど、リョクのトコは大丈夫だった?」
違う話題を持ち出してみる。
「うん、僕は一人暮らしだから。」
「そういえばリョクは大が…」
『大学生なの?』と聞こうとして途中で止める。
社会人なら毎週火曜と金曜の活動に参加するなんて言わないだろうからきっと学生なのだろうと思ってはいたが、それは聞いてはいけない。
「アリスは遅いな。もう10時になるんじゃないか?」
言って時計を見る。
9時55分。
私生活以外の何を話せばいいのだろう。
もともと口達者ではない翔にはそれは難題だった。
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