Strange
「では、私はそろそろおいとまさせてもらいましょうかね。今日はどうもありがとうございました。」
言って立ち上がった斉藤の背中に翔は疑問を問いかけた。
「あの、どうして僕に珈琲を入れて欲しいと?」
斉藤は足を止めて振り返る
「そうですね~、君を見た時に思ったんですよ。この人の入れる珈琲はきっといい味だろうとね。…ショウタさん、アリスさん、リョクさん、人生とは非常に困難な物です。でもね、これから先何があろうと決して大切な物を見失わないでください。そうすればきっとあなた達なら大丈夫ですよ。決して過去にとらわれず、今を生きてくださいね。」
そう言って会釈すると斉藤は出口のドアを開け店を後にした。

「斉藤さんて、相変わらず不思議な人よね。」
事の成り行きを黙って見守っていた美砂がポツリとつぶやく。
「私時々思うの、あの人には他人の未来が見えてるんじゃないかって。」
言って微笑んだ美砂とは対照的に、アリスとリョクは斉藤の言葉に何かを深く考えるようにうつむいていた。
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