Strange
「急に雨が降ってきたからちょっと濡れちゃった。通り雨みたいだけど。」
美砂に出されたタオルで頭をふきながらアリスはショウタの隣に腰掛ける。
「にしてもビックリ!リョクが歌手だったなんてさ。」
相変わらずマイペースは崩さない。
「ごめん。」
「なんで謝るの?歌手復帰するんでしょ。おめでたい事でしょ。そんな弱気でどうするの。芸能界って厳しい世界なんでしょ。もっとしっかり明るく前向きにいかなきゃ!!」
アリスの言葉攻めに気おされているリョクに翔は苦笑する。
「まぁまぁ、今日は俺のおごりだよ。」
言って藤堂は3人が座っている席のテーブルにホールのショートケーキと紅茶を3つ置いた。
「わっ、コレ全部食べていいんですか?」
瞳をキラキラ輝かせたアリスの視線はケーキに向かって一直線に伸びていた。
「一回ホールケーキそのまま食べてみたかったんだ!!!」
すでに手にはフォークが握られている。
「ほら、二人とも何してるの!早く食べないとケーキの鮮度が落ちちゃうんだから。ほらっ、フォーク持って!!!」
フォークを構えて戦闘態勢に入ったアリスに逆らったら…おそらく先ほどの倍以上の剣幕で何かと文句を言われるだろう事を察して2人は慌ててフォークをつかんだ。
「まぁ、落ち着いてゆっくりどうぞ。」
クスクスと笑うと藤堂と美砂はカウンターへと帰っていく。きっと気をつかってくれたのだろう。
「じゃあ、せ~の!!」
「「「いただきます」」」
行儀よく手をあわせて挨拶をする。もちろん言った直後にアリスのフォークはケーキへ向かって振り下ろされていた。
< 86 / 131 >

この作品をシェア

pagetop