Strange
斉田総合病院はこの辺りでは設備が一番整っており評判もいい大病院で、翔の住んでいる場所からは電車で50分程の場所にある。
2つ程電車を乗り換え、途中でお見舞いにと飲み物とお菓子を手に病院の受付へと足を進める。
悟の名前を告げ部屋の番号を聞いた翔は悟の部屋にむかった。
ノックをすると
「どうぞ。」
と悟の声が返ってきたのでドアをあけると、読んでいた漫画から顔をあげた悟が出迎えてくれた。
「よっ、久しぶり。よく来てくれた!まぁ座れよ。」
見た感じも非常に元気そうだが、腕には点滴の針が刺されていた。
部屋自体はそれほど大きくない個室で窓が一つ設けられている。
「大丈夫なのか?」
ベットの横に置かれたイスに座りながら問いかけた翔に悟は能天気に
「全然大丈夫なんだけどな~」
と笑って見せた。

二人は他愛のない話をしあった。
悟は家族旅行中の思い出やハプニングを、翔は“strange”の事を一通り話し終えてそろそろ帰ろうと席を立つ。
「じゃあ、またな。」
「おぉ、新学期にな!」
ベットの上で大げさに手を振る悟に手を上げ『じゃあな』と言うと、病室のドアに手をかけた。
「そうだ、悟知ってるか。」
ふいに思い出した事があって振り返る。
「この病院に入院した人は退院する時に必ず中庭の一番大きな木にお礼を言わないといけないんだってさ。」
「なんだよそれ?」
首をかしげる悟に翔は笑って『さぁ?』と返す。
「昔じいちゃんがこの病院に入院してた事があってさ、言ってたんだよ。この病院に入院した人は全員中庭の一番大きい木の持つ不思議な力で回復してるんだ、だから退院する時は“元気にしてくれてありがとうございました”って言わないとまた入院する事になるんだってさ。まっ、その言葉の後にはいつもの“ロマンがあるだろう”って続くんだけどな。」
「じゃあ忘れないようにちゃんとお礼言ってから退院するよ。」
翔の言葉に笑いながら返した悟の言葉を聞いて、今度こそ翔は悟の病室を後にした。
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