着ぐるみの恋
「昔はな、ケジメ取る為に、エンコ詰めさしたけどな、そんなもん貰うても、犬の餌にもならへん、生ゴミになるだけや……」
大山が修二に近付く。
修二の髪の毛を鷲掴みにする大山。
「五つ持ってこいや」
修二は訳がわからない。
「五つ?」
「5千万や」
「5千万?」
「わしのメンツ潰す慰謝料や、安いがな……」
「そんな金、何処にもありません」
「お前には、大蔵省がおるやろ?大蔵省が?」
大蔵省って? 俺の親?
「親父に言う事だけは…無理です…」
「可愛い息子が公正するって言うてんのや、それぐらい出してくれるやろが?」
澄んだ濁りのない修二の瞳と…黄色く濁った大山の瞳…がにらめっこ。
「親っさん、それは無理です。親の所へ、もう顔見せる事さえ出来ません」
「片意地な奴やな…それやったら、もう一つだけ…ケジメ取る方法考えてやってもええで」
修二は真剣な眼で大山を見た。
「…稲田組の若頭のたま…取ってくるか?」
「たま取るって?殺れって事っすか?」
修二の眉間に深い皺が入った。