着ぐるみの恋
兄は、拓也と会う事になった。
病気の事を話し、拓也の反応を知りたかった。
出来るものならば、拓也の力を借りたいと切に願った。
だが…何しろ拓也もまだ二十代…若かった。
拓也の頭は混乱状態となる。
それでも…龍子を励まそうと、何度も何度も試みた。
が…電話やメールでの愛想のない返答、部屋に訪ねても中には入れてくれない、そんな龍子の態度に…なす術なく途方に暮れた。
兄が、ある情報を仕入れてきた。
「龍子~治るかもしれないぞ!いいや、絶対に治る!兄ちゃんが治してやるからな!」
地方にある強酸性の温泉が、皮膚病に効くと、知り合いから聞いてきた。
兄は、宿泊先から交通まで、全てを手配し、龍子を見送った。
祈りを込めて~~
カリキュラムに祈りなんて通じないよ。
だって…もう組み込まれてるんだからさ…。
2週間に渡る温泉治療の末……兄の所へ帰って来た、一頭のメスヒョウが……。
龍子の肌は、見るも無惨に悪化していた。
素人治療の曖昧な情報……藁にもすがりたかった兄の気持ちもわかるが……これが……龍子を更に深い闇へと、深い砂穴へと、追いやった。