着ぐるみの恋
「ただいま~」
「月子、おかえり~」
原田が、月子の帰りを今か今かと待っていた。
月子の出勤前、夕方になると、部屋に訪ねて来る原田。
鍵を持っている原田の出入りは自由自在。
夕方、月子の手料理を食べ、月子を送り出してから、缶ビールとテレビ相手に、月子の帰りを待つ。
朝になったら、月子が寝ている間に自宅に帰り、仕事をするといった二重生活が続いていた。
原田に対し、月子は日毎に嫌気が増していった。
が、原田が買った部屋、仕方ない事ね…と諦め、流れのままに身を任せていた。
しかし…その妥協に支配されていたのも、修二と再会するまでの事……。
知らぬが仏のズングリムックリが言う。
「月子、遅かったな、何処か…」
「何処も寄ってないわよ!売上が合わなかったから、店で計算やり直してただけよ」
月子のセリフには、何処と無く険があった。
原田はしょんぼりと小声で返す。
「そんなに向きにならなくても……」
修二と再会してから、原田の顔が、言葉が、存在が、やけに腹立たしく思えた。
部屋に帰ると、原田を見ると、無性にいらいらする月子だった。