着ぐるみの恋


バー「黒猫」 の奥席で、修二は月子を待った。

俺は聞きたいよ…振った訳じゃないなんて……何で、今更そんな事言うんだ?

他にどんな理由があんだ?

何であん時に、俺に身を任せてはくれなかった?

今更聞いた所で…もう時は帰ってこない。

そんな事は百も承知さ、お前とどうにかなりたいなんぞ、そんな夢はもうこれっぽっちも考えてない。

けど、教えてほしい、振った訳ではないの後の言葉を…この七年の答えをくれ、月子……この歳月を、お前の言葉で埋めてくれ……。

月子はその日、客が全て帰った後、従業員の誰よりも早く店を出た。

修二さん、待ってて、今直ぐ行くわ~

恋しいあなたのもとに~

月子は急いだ。

恋は盲目……この時…月子はすっかり忘れていた、ズングリムックリの存在を……。


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