着ぐるみの恋
月子を乗せたタクシーが、マンション前で停まった。
原田は何処にも立っていなかった。
私をどういう目に合わそうと、待ち構えているのか……どんな迎え方をしようとしているのか……。
もう、お好きにして下さいませ~
鍵を開けた…?…部屋は明るい。
「おかえり、月子」
やけに優しい声が…一体、どうなったの?
「疲れただろ?風呂入るか?それとも、何か食うか?」
月子は絶句した。
薄気味悪い、この迎え方の裏には、どんな作戦が隠されているの?
とんだ計算違い…。
どうして、どうして私を責めないの?
同情を求めようって訳?
私は…私は、この決心に後一歩が欲しくて帰って来たのに……。
平静を装わなくては…修二さんの事がばれてしまう…。
「お腹空いてない、お寿司屋に連れて行かれたって言ったじゃない。シャワー浴びてくるわ。」
月子はバスルームへ~シャワー浴びながら思った。
今頃…バッグの中、隈無く点検してるに違いない。
でも、修二さんとの証拠など何処にもないわ。
あるとするなら、私のこの体の中よ。
それは…誰も行き着く事が出来ない、魂に証拠は刻まれている。