着ぐるみの恋
冷ややかなギャラリーの中、兄妹と原田の妻のショータイムは終わった。
兄は力の抜けた月子を支え、会場を後にした。
こうなる事は、来る前から知っていた、兄も月子も……。
次の日、葬儀当日も、月子は兄と共に式場に出向いた。
受付に香典渡し、焼香する事もなく、遠い影からひっそりと原田の最後を見送った。
お父さん…私は…あなたの家も、家族も、あなたの命まで、壊してしまった。
私を愛して、愛して、愛して止まなかった、お父さん……愛っていったい何なのよ……。
涙が溢れる…この涙は何の為に流れてるの?
誰の為に?
わからない……ただ、懺悔の思いだけ…。
月子は兄の家で、ただ呆然と時間を過ごした。
これから、どう生きればいいの?
進む道が分からないのよ。
迷子の子猫演じる程、歳も若くない。
脳の回路も遮断された。
何の考えも浮かばない。
でも…ただ一つだけ言える事は…守らねばならない事だけはわかる。
それは…修二への思いを断ち切る事……。