着ぐるみの恋
兄の家族と夕ご飯を食べる。
ここは、一家団欒の温もりに満たされた世界。
お兄ちゃんは偉い人だ。
親の事をばねにして、自分の世界を創り上げた人。
誰にも、自分にも負ける事なく、決して揺るがない信念で、ここまできたのね。
魂の戦士だ…。
それに比べ、私はいったい何してきたんだろう。
これから、私の行くべきとこは何処ですか?
何に向かって生きていけばいいですか?
私には、今、何が出来ますか?
月子は兄に話した。
「お兄ちゃん、私ね、このままずるずる、ここに居る訳にはいかないから、取り敢えず、新しい部屋見つけて、出て行くわ」
「ずっと、ここに居ればいいんだ、気なんかつかうなよ」
「ありがと。でも、それは出来ない…私も、これから考えなきゃいけない事たくさんあるけど…お兄ちゃんみたいに、頑張りたい、もう一度一から…」
「龍子、お前…そんな事言って……また、あのヤクザの所へ行くんじゃないだろうな?」
兄が恐い目で、月子を睨んだ。