着ぐるみの恋


親父……本当は、死んでも頼みたくない。

あんな…血も通ってないような奴に、頭下げるなんて……。

どうせ、嫌味言われて断られるに決まってるさ。

が……会社の代表か?
なりてぇなぁ……。

それよりも、修二は、組長に…あの大山にひいきにして貰いたかった。

組で、特別の存在になりたかった。

その一心で、修二は父親に電話をかけてみた。

「何ふざけたけ事を!1千万だと? お前…今…大山組の家にいるだろう?」

「頼むよ、もう二度と言わないからさ、一生に一度の頼みだよ、親父!」

「ヤクザなんかと付き合うような奴は、仲田家の息子でも何でもない」

「仕事の金なんだ、会社つくりたいんだよ、親父さ、今はヤクザって言っても、皆まともな仕事してんのが普通なんだよ、親父、頼む、この通りだ」


父親は黙った、 そして低い声で言った。

「…その金で、この家と一切縁を切ると言うなら、考えてやってもいい」

家と縁を切る…親父とお袋と兄貴と…病院と…無関係に?

修二は悩んだ。

親父よ、そんな簡単に親子の縁が切れんのかよ…そんなあっさりと言えるセリフかよ……。



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