着ぐるみの恋

修二の心は幕を閉じた。

もうわかったよ……。

家なんかくそくらえだ!
こっちから捨ててやるよ!

「親父よ、男、修二!肝に銘じて約束するよ。もうこの家には二度と帰ってこない!」

父親は、小切手広げペンを持った。

「こらぁ!親父よ!ちょっと待てやぁ」

大山譲りの関西弁で、修二は脅し声を張り上げた。

父は目を見開き、修二を見上げる。

「何だ?お前、親に向かってその口の効き方は? 気でも狂ったのか?」

「兄貴は一生安泰、病院の跡取り…同じ親から生まれた俺が…縁切り一生分の金が1千万とは、ちぃと安過ぎるとは思えへんか? 0が7個や、その頭は1やない、3って書けや!」

「修二、お前って奴は……」

「いつか来る財産分けが早なっただけや、もう二度と会う事もないわ。安いもんや!はよ書かんかい!」

暫く沈黙の中、二人は睨み合った。

そして…にらめっこの末…先に視線外したのは父親の方だった。

父親は、ため息一つ吐いた後ペンを執った。

修二は、3千万の小切手をもぎ取った。

「他人の病気治す前にな、親父とお袋よ、おのれら、我らの心、他の病院で治してもうた方がええのと違うか!」


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