着ぐるみの恋
「あっ!昨日の、エレベーターの!」
「やぁ……」
月子の心臓はバクバク波打った。
実は…さっきから絵理子と話してても上の空…この名無しの男の事ばかり考えていたのだ。
「いらっしゃいませ」
月子が席に着いた。
修二が悪戯っぽい目付きで……
「迷惑だったかな?」
「いいえ、そんな事思ってない…ただ、昨日の今日、こんなに早く来て下さるなんて思ってなかったから、ビックリしたわ…」
「紹介者は?何てさ、聞かれるから、つきこ、って言ったよ」
月子は、ポーチから名刺取り出し、修二に渡した。
「改めて…月子です」
「お月様の月か…築地の築かなとか、勝手に思ってたよ。いい名前だね。でも、本名じゃ?ないよな?」
「ええ…本名は…言いたくなくて…あまり好きな名前じゃないの」
「そぅ、言いたくない事は聞きたくない。あっ、俺は、仲田修二、間違いなく本名だよ」
と、仲田サービスの名刺を渡した。
「えぇぇ!社長さんなんですかぁ?」
「大した会社じゃないよ」
と修二は、観音さんにニコッと微笑んだ。